~ 僕が家具をつくる理由 ~ JOHN KELLY
日本での販売開始から20年が経ったジョン・ケリーの家具。
2001年、来日したデザイナーのジョンが受けた雑誌社のインタビュー内容から。
とてもお洒落な人だ。
明るいグリーンのシャツに青いジャケット、そしてノーネクタイ。
2001年4月。ジョン・ケリーは東京・渋谷区神宮前に移転オープンしたばかりのショールームにそんなファッショナブルないでたちで現れた。早々インタビューを開始した。
―― その服、似合ってるわ。
ありがとう。草の色、ブルースカイ、春の色でまとめてきたんだ。
―― あの壁の写真、あなたですね? エキセントリックなアーティスト風だけど。
ああ、あれね。若い頃のフランク・ロイド・ライトのつもりなんだけどな。笑
似てない?
―― けっこう役者してるわけね。カタログにも積極的に登場してるし。
いい質問だね。 僕はお客さんにジョン・ケリーってどんな人だろうと興味をもってもらいたいんだ。もちろん、期待に応える容姿はしていたいよ。だから、僕に会ったら、いろんなことをどんどん聞いてほしいね。質問しやすいムードを大切にしているんだ。
―― 周囲に気を遣うタイプ?
そうだね。とくに僕と一緒に仕事をする仲間はいつもHAPPYでいてほしいなと思うね。僕自身、楽しい人間だし。
ジョン・ケリーは1963年生まれの39歳。(インタビュー当時)
来日は4回目だ。取材前、資料に目を通して驚いた。
「彼が最初にデザインした家具はアーツ&クラフツ運動やドイツのバウハウス、そしてフランク・ロイド・ライトやル・コルビュジェ等に代表される建築家がデザインしたモダン建築に影響を受けました… 」おそろしくアカデミックな精神形成をしてきた人なのだ。
このタイプは日本の若い建築家やデザイナーにも結構多い。
けれど、ショールームに並ぶジョン・ケリーの家具はシンプルさが印象的。私たち日本人のセンスにもしっくりくる。デザインが自らを主張しすぎることもなく、しかも個性を強く出すことに成功している。巧妙にクリエイトされたそのデザインの奥に何か語られていないものがあるような気がした。読めそうで読めないジョン・ケリーの創造の世界。
―― あなたの出身のペンシルベニア大学って、シェーカー家具が生まれた地域に近いんじゃない?
その通り。僕はシェーカー教徒が創った家具や生活用品の機能的な美しさにも影響を受けている。とくに素材がいいね。日本でいう曲げわっぱにそっくりな容れ物もあるんだ。大学では日本人の先生にも習ったよ。
―― ライトも日本には深く魅せられていた。
ライトはいろんな文化にアプローチしたかったんだと思う。つまり、クロス・カルチャーに強い関心があったんだね。
―― わかってきた。あなたの家具はまさにクロス・カルチャーから生まれたんだ。
正解。僕のデザインのテーマはクロス・カルチャーなんだ。そしてシンプリシティ。最小限がいちばん使いやすいと思う。
そう語る彼は’92年に家具第一作を世に出して以来、デザインで数々の賞を受けてきた。価格もリーズナブル。世界15か国で発売されており、ファンは多い。
2001年春